■ムラサキシキブ(紫式部)■ クマツヅラ科 ムラサキシキブ属 原産地:日本〜中国
ムラサキシキブは有名な日本原産の植物ですが、鉢植え等で広く流通しているのは、
やや小型のコムラサキシキブが多い(流通名:ムラサキシキブ)。
初夏に小さな淡い紫色の花が咲き、秋には小さな紫色の果実を多数つけます。
■話の内容はフィクションです

朝寝坊しがちな息子の裕介。今朝は珍しく目覚ましの音が鳴る前に起きてきた。
それもそのはず、今日は待ちにまった遠足の日なのだ。
よくこんなに大きくなってくれたものだと目頭をあつくしているどころじゃなく、せっせとお弁当をこしらえています。
もう一週間も前から我が家は大忙し。
遠足用にと駄菓子屋さんで30分もかけて選んだお菓子を、夜中にこっそり全部平らげてしまって、
翌朝ベソをかき始めたかと思えば「おなかが痛い〜」と言い出すし、
しまいには、去年義母が買ってくれた黄色いリュックが気に入らないと泣き出す始末。
あ〜、こんなんならいっそのこと遠足の話なんか聞かせてやるんじゃなかった。
2年前、裕介は突然の発作に襲われて病院へ運び込まれた。
小さな胸を激しく膨らませたり萎ませたりしながら、狭くなった気管の間から懸命に呼吸をしていた。
担当の医師からは、原因不明の発作だと告げられ、峠は越したようだが念のため精密検査が必要なので一ヶ月ほど
入院した方がいいでしょうとすすめられた。
夫の勉も私も仕事が生き甲斐で、それぞれがお互いの立場を尊重し家事、育児は50/50でやってきた。
そんな私たちの背中を見て育った裕介は、めったにわがままも言わない手の掛からない大人しい子だったから
勉も私も仕事に専念することができた。
そんな裕介は、発作が起きる半年前くらいから頻繁に宙を見上げるようになり
その際必ず「チロしゃん、チロしゃん」とつぶやくようになった。
それは1週間に1回から、1日に数回と日を重ねるごとに多くなっていた。
気にはなっていたけど、小さな子は大人には見えないものが見えるらしいという話を聞いたことがあるし
子どもの頃って、心が綺麗だから色んなものが見えてしまうのね。なんて、冗談まじりに話して済ませていた。
勉はどうしても手が離せない仕事があるらしく、私に仕事を休んで裕介のそばにいてあげてくれないかと言う。
私だって休みたくないけど、渋々承諾。一週間の休暇届けを出してきた。
入院してから5日が経ち、担当医から呼び出された。
「血液検査、レントゲン、ウィルス検査いずれも異常は見つかりませんでした。
今のところ原因は不明ですが、裕介君の様子も落着いてきたことですし、一度ご自宅へ戻ってみてはいかがでしょうか。
そうそう、話がそれてしまうんでうがね...お宅で動物を飼ってらっしゃいますか?」
いえいえ、勉も私も動物アレルギー。
側に寄るだけでもくしゃみ、鼻水が止まらなくなるので絶対ありえません。と答えた。
「そうですか。こちらに運ばれてきた翌日、お母さんが仮眠を取られている時にチロちゃんチロちゃんと
何度もうわ言をいうもんでチロちゃんに会いたいの?と聞いたんです。すると今度はチロちゃんだっこ、だっこ。
というんですよ。きっとお宅で飼ってるペットか何かの夢を見てるんだろうと思いましてね。
いや〜、その時の裕介くんの顔が幸せそうでしてね〜。あまりに可愛かったものでつい...。
失礼しました。裕介君はもう大丈夫。ご自宅に戻ってゆっくり休ませてあげて下さい。
あと一週間くらいは激しい遊びをさせないように。」
ありがとうございました、お世話様です〜。あ〜、あと一週間休暇届けを出さなくちゃだめか。
自宅に戻って数日が経ち、裕介は以前と変わらないほど元気になった。
でもひとつだけ変わった事がある、それはチロちゃんと言わなくなったこと。それも見事に一度も出てこない。
今度は私の方が、気になって仕方なくなってきた。
クッキーをべちゃべちゃにしながら遊び食いしている裕介に「チロちゃんってなーに?」と聞いてみた。
すると宙を見上げながら手を振って「チロしゃん ワンワン」と言った。
「え"っ、いぬ?チロちゃんって犬なの?」私の言葉にウンウンと2回うなづいてから、
たーっと走り寄り全身の力を込めて抱きついてきた。しかも、今まで見たこともないような笑顔で.....。
久々の出社を2日後に控えた私は、念のため裕介を担当医に診てもらいに行った。
まったく異常なし。と太鼓判を押されてほっとした。これでまた仕事に戻れる!
よかったよかった。ありがとうございました。言い終わったところでふとチロちゃんの事を思い出したので
担当医に話してみた。
「そうですか、チロちゃんは犬でしたか〜。チロちゃんはお母さんの代わりだったんですね、きっと。
小さい身体で寂しいのを耐えてたんですよ。甘えたいけど甘えられない。側にいて欲しかったんですね。
偉かったね〜、裕介君。お母さんの側が一番だよね〜。偉いぞ〜、偉いぞ〜。」
ゴリゴリ頭を撫でられてる裕介は、不思議そうな顔をしながら髭もじゃの担当医の顔を見上げていた。
久々の出勤の際、私は辞表届けを鞄に入れ会社へ向った。
あれから2年。
すっかり大きくなった裕介は、砂埃で汚れた黄色のリュックを背負って帰ってきた。
「ただいま〜、お弁当全部食べたよ!たかしくんがね〜、りえちゃんがね〜...」
延々と終わりそうにない話を聞きながら、軽くなったリュックを無理矢理ぬがし、着ていた洋服をひっぺがして
裸ん坊をお風呂場へ放り込んだ。
よし次は弁当箱を洗おうと蓋を開けると、空になった弁当箱の中から山で拾ってきた
お土産が一杯詰め込まれていた。
「お父さん今日は早く帰ってくるといいね。たくさんお話聞いてもらおうね。」
お風呂場から反響した裕介の歌がいつまでも続いている。
■ point ■
小さなガラスの瓶にいくつかに分けて実をさしました。
ひとつずつ離して置いたり、まとめたりしても面白いと思います。
小さな秋のアレンジ:素材(上右画像) どんぐりの笠、水引、紫式部、針金
どんぐりの笠に針金を巻いて籠にしました。
紫式部はこのままドライになりますが、水引は水が下がると枝が垂れてしまいます。