■マングローブ■ 

マングローブ林を形成する植物のひとつ。高さ10mくらいまで育ちます。
種子は樹上で発芽し、落下して泥土に突き刺さる性質を持っています。

この姿が面白いので、最近では発芽したばかりの幼植物が流通しています。

■話の内容はフィクションです

ここ2日程、母が鼻歌を歌いながら縁側で何やら熱心に手入れをしている姿を度々見かける。

その
訳を知りながら、知らない振りをして声をかけた。
「やけに楽しそうだね。なんかいいことでもあったの?」
「父さんがくれたのよ。マングローブっていうんだって。あの人から贈り物だなんて何年振りかしら。」
母は2枚しかない葉を撫でたり、さすったりしながらそう答えた。

2年くらい前になるだろうか、行きつけの居酒屋で兄の剛から「西表島で塩をつくりてーんだ。」と打ち明けられた。
あまりに突然の話だったことや、兄夫婦と同居している親父たちは
誰が面倒みるんだよ。という怒りが湧いてきて、
すぐには賛成出来なかった。
しかし白髪が増え、顔が油ぎってしまっていた剛の表情を見て、仕事のストレスが尋常でないことを察していたので
打ち明けられた時の、やけにこざっぱりとした剛の顔が頭から離れず、それを払い除けたくて、
帰宅してすぐに冷蔵庫にあったミネラルウォーターをたて続けに2杯飲んだ。

「次男ってことは、両親と同居しなくてもいいってことよね。」
つきあい始めた頃に、妻の夏美が屈託なく話していた言葉が思い出される。結婚後、義父母への気遣いも忘れず、
やれ父の日だ、誕生日だとまめにやってくれている。
でも、いざ同居してやってくれないか。と言うには勇気が必要だった。後ろめたい気持ちを無理矢理押し殺して、
西表島行きを辞めるように説得したこと。剛の決意が堅いこと。年老いた親父たちに寂しい思いをさせたくないこと。
などを打ち明けた。

夏美は、一瞬身を堅くさせたが「剛さんも今まで色々大変だったんでしょう。私はいいわよ。部屋も1つ空いてることだし、
料理だって義母さんにつくってもらったりして。ちょっと楽させて貰っちゃおっかな〜。」と舌を出した。

俺たち夫婦と親父たちとの同居生活が始まってから、1年が経つ。
始めは気の使い過ぎで少し痩せた夏美も、近頃ふっくらとして元気を取り戻し、たまに届く、剛一家からの便りと塩を
母ともども楽しみにするようになった。
それがここ数カ月、何の便りもなく、塩も届かない。
最初は「まだかですかね〜。そろそろ我が家のとっておきの調味料がなくなっちゃいそうですよ。きっと注文が殺到して忙しいんですね〜。」という夏美の言葉に、
「そうね〜、電話してみようかしら。」と答えていた母も、2ヶ月経ち、3ヶ月経ちするうちに、その話題を避けるようになった。
夏美も何かを感じ取ったらしく、今まで以上に陽気に振る舞うようになり、また少し痩せた。

「電話すればいいのに。」という単純な思いもあったが、あえてそうしない母の様子は、剛一家と生活していたころに身に付いた習慣のようでもあり、
俺たちが口出しすべきではないと夏美と話し合い、ぽろっとこぼれそうになる言葉を飲み込んだ。

母は、持病の腰痛をこらえているだけではない、苦痛の表情を見せるようになり、もの思いにふけることが多くなった。
父は、それを見てみぬ振りをしている。
夏美は、乾いた笑い方をするようになった。
俺は、どうだろう。このまま何もしないべきか、するべきか。

やっぱり電話をしよう。案ずるより産むが易し。と言うじゃないか。適当な理由をつけて様子を伺ってみればいいんだ。

何回受話器を取ったことだろう。仕事の合間を縫って会社の電話を使って3日もかけ続けているが、剛の家は留守電になったままだ。
これはかなりまずい状況になっているんじゃないか。と航空券の予約をしようとインターネットの画面を開いた時、内線のベルが鳴った。
「片岡 剛様からお電話です。」
「ありがとう。」背筋に冷たいものが走るのを感じながら、保留のボタンを押した。

「悪り〜、わり〜。塩もうなくなったか?送らなきゃと思いながら、手こずっちまってよ〜。」以前より張りのある剛の声だった。
剛の声の後ろからは、ゴーッという機械の音が絶えず鳴っていた。
怒りのあまり、冷えていた身体に一気に血が巡り、受話器を投げ付けそうになったが必死にこらえた。
「親父もお袋も心配してるぞ。」というのがやっとだった。
その後、言い訳めいた剛の言葉はほとんど耳に入らず、悪り〜、わり〜という無邪気な声を遮るように受話器を置いた。

帰宅してから、何食わぬ顔で剛から会社に電話があったことや、塩を送ると言っていたこと、急に塩の甘味がなくなって
苦味ばっかりになったから寝る間もおしんで作業に没頭していたこと。を皆に伝えた。
その瞬間、数カ月固まっていた空気が一気に弛むのを感じた。

夏美は「やっぱりね〜」と笑い、父は「ドアホ」とつぶやき、母は眼を潤ませた。

それから数日後、剛から段ボール一杯に詰った塩と日焼けした一家の写真が送られてきた。
そしてめったに買い物をしない父が、マングローブの鉢植えを大事そうに抱えて帰ってきた。

縁側に座っている母の鼻歌と、台所から聞こえる父と夏美の笑い声を聞きながら
「俺は幸せ者だな
」とつぶやいた。

   

旅先で見つけた缶

小さな苗を植えて、苗の成長と
旅の思い出の両方を楽しめそう。
(思い切って底に穴を開けないと
 いけませんが...)

ホーローの漏斗

上口に4つくらい小さな穴を開けて
吊り下げられるようにすると、
ツル性の植物にも利用出来ます。

茶缶

ふたと本体を分けて2つの鉢を作れ
ます。ちなみにこれは「一保堂」の
茶缶。まだ若いです。

焼き型

使い込んだケーキの型で、引退の時期を
迎えそうなものを利用。
焼き色が植物を引き立ててくれそう。

■ point ■

時間を経たものと、植物は相性がいいです。
底に穴を開けて、鉢にしましょう。
今回は金属ものをご紹介していますので穴をあける時は、電動ドリルをお持ちの場合は
それが一番簡単にあきます。無い場合は、太めの釘であけてみてください。
(金属の種類によって無理な場合があります)

まずは、家の中にあるものを見回してみましょう。
素敵な素材は身近に転がっていると思います。

ここでは底から大きめの石、赤玉土4、腐葉土4、富士砂2を使用しています。
※大きめの穴を開けた場合は、ネットを使用して下さい。(土が漏れないようにするため)